―――――キーンコーンカーンコーン。 放課後の教室ついさっき、チャイムが鳴る前までは騒がしかった教室。それが、チャイムが鳴り今日の授業が終わると生徒は次々と出ていきあっという間に静まりかえっていた。 「おい」 静かな教室に一つの声が響く。夕焼けのオレンジ色の光が教室を照らしている。 「いつまでそうしてるつもりだ」 少し苛立っているような声。いや、実際に少し不機嫌なのだろう。その声もそうだが、彼の周りの空気がそう語っている。今はこの教室にこの二人しか残っていないから何もないが、もし他の生徒が残っていたなら何も言わずにこの二人の場所から距離をおくだろう。 「下校時間までそうしてるつもりかよ……」 ため息混じりで言われた言葉。目の前の生徒の姿に頭を悩ませる。 「……………」 答えを見つけるまでの間。二人の間には沈黙が続いた。漸く出てきた答えも、いいといえるのかも分からなければ少ない選択肢から導き出したもの。でも、やっと見つけた答え以外に今は何もないのだ。そう考えると、その答えのままに言葉を発した。 「ナルト」 自分の名前を呼ばれ、机に伏していた生徒―――ナルトは若干反応を見せた。 「………悪かったな」 少しの間をおいてから言われた言葉。それを聞いた瞬間。ナルトは驚いて顔を上げた。 「何で、サスケが謝るんだってばよ……?」 浮かんだ疑問を、驚いた理由もそのままに訪ねる。 「お前だけに非があるわけじゃねぇから。それにこのまま何も言わなければ、お前はずっとそうしてただろ?」 言えば、不思議そうな罰の悪そうな複雑な表情を浮かべた。そして、ゆっくりと口を開く。 「ごめん」 一言。 「オレってば、謝らなくちゃって思ってたのに出来なかった。サスケと話しづらくて、逃げたんだってばよ」 話さなくてはいけないと思った。謝らなければいけないと思った。 「ごめん。オレが悪かったってばよ」 謝る。ごめん、悪かった。 「お互い様だって言っただろ。そんなに謝る必要はねぇよ」 「でも」 「ナルト」 ナルトが反論しようとした時。サスケはその言葉を遮った。 「お前は、自分の決めたままに行動を起こした。それに問題があったから、呼び出しをくらったわけだけどな。オレだって同じだ。だから、一方的に謝られても迷惑なだけなんだよ」 口調が変わったわけではない。でも、その瞳には優しさの色が見えた。いつもと変わらないけれど、いつもと違う。そんな風に見えた。たまにだけど、いつも何かと言ってくるサスケが優しい。そう思う時がある。今もまたその時で、もしかしたら本当はこの優しさを上手く表に出していないだけではないかと思ったのはいつ。頃だっただろうか。あまり遠くない日だったと思う。 「分かったってばよ」 ただ。この時間がとてつもなく大切であるように感じた。この、二人で一緒に居られる時間が。何よりも大切であるように思う。 「早く支度しろ、ウスラトンカチ」 「もう終わるってばよ!」 先に教室を出ようとするサスケを追うナルト。いつものように、隣り合わせに並んで歩く。会話の合間に見える笑顔は、いつもと変わらずに。変わらない二人の姿がそこにあった。 家へと向かう帰り道。並んで帰るいつもの光景。 |